恩師のリサイタル
先日、自由学園明日館という、フランク・ロイド・ライト建築の素敵な場所で、桐朋学園でチェンバロを教えて頂いた有田千代子先生のリサイタルがありました。 見所、聞き所の一つとしてリュッカース一族によるオリジナルのチェンバロを使われたという事があるかと思います。日本にこのような銘器が存在することも驚くべきことで実際に素晴らしい音色の楽器です。ですが、コンサートを聞いていると先生の音楽の素晴らしさはむしろ楽器を超越したところにある、そんな気がしてきました。 先生の演奏は常に、ダイレクトに語りかけてきます。本当に声が聞こえてくるようです。 それはどの楽器で弾かれても変わらないことです。 楽器の倍音をめいいっぱいに利用して、音の洪水で聴衆を惹きつける演奏家も多いですが、先生ははっきりとした語りによって音楽を作られる方で、その甘くない優雅さ、深さというものは唯一無二のものであると、つくづく感じました。 かつてそうした先生の演奏に触れて「かっこいい!」とチェンバロにだんだん惹かれた時の気持ちを思い出したコンサートでもありました。 芸の道は長く、深いんだなーと感じます。私もトボトボとでも前進できるよう頑張ろう!と思います。