留学時代の先生のお話

少し留学時代についても、書いてみたいと思います。
もう完全帰国してから一年半ほど経ってしまい、知らず知らずに記憶が風化しているところもあるかもしれませんが。

私は7年間にフランスのストラスブール、スイスのバーゼル、ドイツのフライブルクでチェンバロの勉強をする機会に恵まれました。
主に3人の先生とソロを勉強したわけですが、学校の先生以外にも沢山のチェンバリストたちのアドバイスを受けることができました。
先生方に恵まれたのは、幸運だったと思います。

最初に勉強したストラスブールで、アリーン・ジルベライヒ先生はチェンバロの基本的なタッチ、そして楽譜の読み方を教えてくださいました。先生は信念として「一人で分析ができれば、一人で弾ける」と常におっしゃっておられ、楽譜をいかに読むかということをとても大切になさっていました。
先生のタッチは素晴らしく、香り高い音楽を奏でられます。フランス人はとりわけチェンバロを素敵に奏される方が多いですが、アリーンの音楽も格別でした。
人柄も素晴らしく生徒の日常までも気にかけてくださり、かつ少女のようなラヴリーな雰囲気をも合わせ持つ先生ですが、そんな先生が「音楽は時に官能的で毒がなければいけない」とおっしゃっていたことは非常に印象に残っています。

次に、バーゼルではアンドレア・マルコン先生に教えて頂きました。
先生のクラスはその頃人数が少なく、先生は1ヶ月に一度しかいらっしゃいませんでしたが、レッスンは10時間ということもあり(つまり一日中)非常に密度の濃いものでした。
マルコン先生は「よい教師は多くを語らない」をモットーにされているようで、あまり細かいことはおっしゃいませんでしたが、生徒の演奏を全身全霊の集中力で聞いてくださり、それだけですこしづつ上手になるという魔法の様なレッスンの方法をとられていました。そして生徒が自身で本当に感じた音楽を奏でたときに、それがつたないものであっても心から喜んでくださいました。マルコン先生から習った一番大きなことは「音楽を聴く」ということそして「本当に自分の思う様に弾く」ということだったように思います。イタリア人のとても暖かい方で、先生の指揮する沢山のコンサートを聴いたこともかけがえのない体験です。

最後に、1年だけですがフライブルクではアメリカ人のロバート・ヒル先生のもとで勉強いたしました。先生はとにかく音楽に工夫をこらすことを大切にしておられ、「アートという言葉とアーティフィシャルって言葉似てるのはなぜだと思う?」と最初におっしゃいましたが、それが先生の信念を表しているように思います。
とにかく、考えて考え抜くそれが先生にとっての音楽に対する愛情であり、その独創的な発想からは本当にいつも大きな刺激を受けていました。
最も遠回りなやり方を考えるのも先生は大好きで、生徒は時に忍耐を強いられますが、そこから得られる表現はやはり安易な近道からは得られないものです。

3人とも全く違った個性を持つ先生方でしたが、どの方も心から尊敬し大好きです。
先生方に恥じぬようにこれから進んでいけるでしょうか。


         

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